1- レス

【初等・中等】国語専攻【学年問わず】


[630]名無しさん@愛教ちゃんねる:2008/02/23(土) 18:37:53
→さて、その紙ヒコーキは、明日に向かって投げられる。これまでの形ある
ものばかりで進められてきた歌詞世界が、ここで一転して「明日」という
形のないものを取り込み、その意味で幻想的でもあり、隠喩的でもある。
この部分の意味は、いちいちの説明を拒否するほど、鮮明である。表現上の
効果ということでいうならば、主体の夢、しかもそれはテストの裏に書かれた、
学校や社会といった周りの環境に対するプロテストとして表象された、さらに
そうすることで自分というものが輪郭を持ち始めることを獲得する契機とも
なった、自分自身の化身として、また実像としての因果を持つ夢が、
ここで初めて歌詞世界に現れた「明日」という抽象的で、しかし毎日端的に
迫り来る未来として切実なものにむけて投げられるという構図がある。
ここで、紙飛行機らしく「飛ばす」のではなく、「投げる」とあることにも
注意したい。思春期の、社会と折り合いをつけることもままならない主体に、
あるいは希望と不安とが身体を侵食し、アイデンティティのありかを探す主体に、
速度と方向を見定める「飛ばす」ということはできない。ただできるのは、
自分の持っている力を全力で込め、それをまだ見ぬ、しかし切実な「明日」に
向けて「投げる」ことのみである。この、不確実で、それでいて力ずくで未来に
向かう主体のありかたは、実体としての中高生の心情を含みつつも乗りこえ、
この歌詞世界の深いところを一貫して流れる「思想」でもあった。


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